平成16(2004)年6月、厚生労働省より、ユニバーサルデザインフードが、国が許可している「特別用途食品 高齢者用食品」の基準に抵触する可能性がある旨の指摘を受け、ユニバーサルデザインフードと特別用途食品の関係等について数度協議を行った経緯がある。
当協議会では「加齢や身体障害等により咀嚼・嚥下機能が低下した人、口腔内の疾病及び歯科治療等により一時的に食事が不自由になっている人等」を対象に食品のかたさ及び粘度に関する物性値等に関する自主規格を定め、食品のかたさ及び粘度に応じて4段階の区分を分け、この区分に応じた用語とユニバーサルデザインフードのロゴマークを表示して消費者の選択を容易にしている。
本食品群は、以下の理由から健康増進法第26条に規定する「特別用途食品」に該当しないものであると解釈している。
- 自主規格において物性値のみを規定しており、栄養学的な特別な配慮を規定していないこと。
- 高齢者専用ではなく、一般用食品として販売していること。
- 製品への表示は食品のかたさ等に関する内容について平易な表現を用いて表示しており、高齢者の用に適する旨を医学的、栄養学的表現で記載していないこと。
なお、本食品群の販売等にあっては、製品等に対し下記の表現を行わないよう、会員企業に対し指導徹底を行う。
- 咀嚼・嚥下困難者用食品である旨の表現
- 特別用途食品(高齢者用食品)と同様の特性を持っている旨の表現
- 特別用途食品として厚生労働省の許可を受けていると誤認させる表現
平成21(2009)年4月1日より、特別用途食品制度が改正・施行されましたが、同改正にあたり、厚生労働省では、企業や業界団体に対し要望書の提出や、同省が主催する「特別用途食品のありかたに関する検討会」へのヒアリング対象企業・団体としての出席を促してきました。協議会では、「高齢者用食品」の改正案を審議する折、業界団体として同検討会にてヒアリング対象団体として出席し意見を述べる機会を得ることができました。意見の要約は下記の通りです。
この結果、今般の同制度の改正により、ユニバーサルデザインフードに関連する制度としては「えん下困難者用食品」のみが特別用途食品に組み入れられ、協議会の要望のとおり「高齢者食品」や「そしゃく困難者食品」といった用語がこの制度の対象から外れることとなった。
これにより、今後これら対象外となった分野が事実上、業界の自主規格(ユニバーサルデザインフード)に委ねられることとなった。したがって、物性に配慮した一般の加工食品として「ユニバーサルデザインフード」の商品やパンフレット等へ記載できる表現についても大きく緩和されることとなった。
今回の「特別用途食品制度」改正に際しては、本協議会として厚生労働省に対して下記の質問を行い、回答を得ている(「特別用途食品制度の見直しに関する説明会」平成20(2008)年10月24日)。
- Q1.製造物責任の観点からの注意喚起・警告表示方法についての確認
「誤嚥に注意してください」、「嚥下障害の方は医師や専門家にご相談ください」などは専門用語を含んでいるが、これら表現は業界として顧客に対して必要な表示であり商品に記載したいが、行ってよいか。 - A1.警告表示、注意喚起表示は全く問題ない。むしろ積極的にやってもらいたい。(例えば、こんにゃくゼリーでの注意喚起表示ではこれを行っている)
- Q2.「高齢者」、「そしゃく困難者」が特別用途食品制度から外れることで、食品業界が一般的に使用できる表現と範囲についての確認(「高齢者向け」などを実際にパッケージに書けるのか)。
- A2.ベビーフードと同様の考え方が適用される。「高齢者の方にもたべていただけます」など、単に「高齢者向け」である表示は問題なし。この場合、求めがあった際にはこれに適する理由を説明できなければならない。ただし、商品・パンフレット等にこれらの説明を医学的、栄養学的に記載することはできない。同様に「高齢者に、又は、かむ力が弱まった方に良い」という表現もできない。「やわらかいので」など物性に言及した説明であれば問題はない。
また、「そしゃく困難者」については病気・病態を表す専門用語のため表記はできない。「かみにくい方」「かむ力が弱まった方」などの表現であれば問題ない。