日本介護食品協議会は去る1月30日から2月1日の3日間、名古屋のナディアパークで開催された「北欧と日本の成功するユニバーサルデザイン展」に参加しました。主催者の株式会社国際デザインセンターは1985年に愛知県、名古屋市、地元経済界が一体となって設立、1989年には世界デザイン博覧会を開催、これまでにも国際的なデザイン分野の催しを数々手がけてきました。民間企業ですがスタートはボランテイァのメンバーが中心になって組織化しました。
今般のユニバーサルデザイン展ではデザインの求められる役割が分科や生活と共に刻々と変化する中、ユニバーサルデザインの本質を探ろうという趣旨で開催されました。UDとは、すべての人にとって使いやすく、わかりやすくデザインされてモノやサービスを言い、これからの商品作りの上で重要なキーワードとなっています。
当日は展示会2つ、シンポジゥム1つの3部構成で催しが開催されました。
1. モノの意味を探るプジェクト展
ある一つのプロダクに関する問題や課題が明白で、それらを解決するために商品開発を進めることはすでに行われていますが、モノがあふれかえっている現在、新製品のニーズや価値観は見えにくくなっていることも事実です。商品単体が持つ機能や効用を探査するだけではなく、生活者のモノへの気持ち、その軌跡までも丁寧にたどって、あらためてモノを考え直し、UDなモノはなにかを模索する展示会です。展示された生活物資は121品目ですべてモノトーン調の白色でコーディネートされていました。こういう状況だとモノに対してたとえば、こんな意味が加わればもっと素敵なモノになりそう、思いもしなかったモノ同士の共通点が見いだせたりするというねらいです。それぞれのモノにモノムマンダラ(意味の集合体図)をモノの擬人化調査と感覚調査データ約30,000から解析しています。
モノの中に缶詰がありましたので紹介しましょう。いっしょにあったらいいものはワインとキッチンです。イメージは「力強い」、「簡易」ということてす。
2. ユニバーサルデザイン展
協議会が参加した展示会です。会場がデザインギャラリーで部屋自体がデザインといったものでブースディスプレーもコーディネートということでシンプルでした。参加企業はトヨタ自動車、INAX等のハード分野企業7社と食品は協議会のみ、また海外企業は6社でした。
来場者はやはりデザイン関係の人が圧倒的に多く若い世代と感じました。あまり介護の人はいなかったようです。4区分ととろみ調整食品を展示しましたが内容物の試食・試飲は行わなかったこともあってか、もっぱら容器包装のデザインに注視していたようです。容器包装のUDは真剣に考えねばと痛感しました。
3. シンポジウム
初日の1月30日に開催されました。
講演1.北欧と日本の成功するユニバーサルデザイン
スウェーデン・エルゴノミデザインジャパン ダーグ・クリングステット氏
トヨタ自動車 大島氏
INAX 宮脇氏
コボ 山村氏
国内のユニバーサルデザイン先進企業によるデザインアプローチをはじめ。北欧スウェーデンのユニバーサルデザインのパイオニアによる、同国の最新事情とこれから日本企業の関わり、また今後の展開について講演。
スウェーデンでは1969年に今の日本のような高齢化社会に到達した。UDという商品は存在しない。もちろん、これをめざして商品開発しているが、バリアーフリー完全といえるものはなく未だに改良開発を重ねている現状である。今日本でホーム施設制度もできたが、失敗に終わっている。今は在宅、いわゆるマイホームが全盛だろう。
トヨタは自動車は単に輸送移動という手段という発想から脱却している。家庭の居間という見方で住の感覚を大いに取り入れ、今後も別のジャンルからアイデアを取り入れUDを目指したい。
INAXは、たとえばトイレであるが本体の機能はこれ以上追求しない。ゆとりの空間配慮とか寝室に於けるトイレの配備はどうあるべきかを追求していく。
講演2.ユニバーサルデザインの変容と若手デザイナーによる次世代の提案
リビング・デザインセンター 橘田氏
ランチボックス・デザインスタジオ 中西氏
ドリルデザイン 林氏
若手デザイナーで構成するユニットにおける過去6年間のUDの展示企画から。メーカーや生活者のニーズ或いは反応がどのように変遷したかを検証するとともに、「モノの意味を探るプジェクト展」から生まれたデザイン感覚の紹介について
講演3. 新たなモノ作りのへの挑戦・・全員によるパネルディスカッション
議論されていたポイントはUDの定義でした。すなわちUDとは目標としてあるものか、あるいは結果としてあるものか企業とデザイナー個人とでは相当温度差があるようです。
企業側は一応にモノの機能はもういい、そのモノはどうあるべきか、ヒューマンなアプローチにシフトしているとしUDが目指すのは使う人が自立できることである。一方、デザイナー側はUDとは仕様の域をでないが、そこに本来のデザインを付加したいとするもので両者が融合すればより完璧なUDが生まれるという結論でした。UDを標準化するのは無理があるということです。それと今日本ではユニバーサルデザインという言葉のみが一人歩きをしているのは全員危惧していました。